1977年初演以来、繰り返し上演されてきている『楽屋』。
はじめて戯曲『楽屋』を手にしたのはまだ10代の頃だった。
作家のリリカルかつ壮絶な言葉に憑かれて折々開いた。
昨年の冬から続く長い長い夜の中、私を強く保たせたのは、清水邦夫さんの台詞だった。
それは10代の頃から応援してくれている友人からの便りがきっかけだった。
「直子、今は生きたマネより死んだマネ」
『真情あふるる軽薄さ』の台詞だ。
1回目の緊急事態宣言の打撃をもれなく受けていた私は、この言葉が、友人の便りが、引き金となり再び清水さんの作品を貪り読んだ。
そして『楽屋』と再会。
『楽屋』には死せる者の魂と生きる者の魂が響き合っている。
「生きていきましょうよ。」
『楽屋』の中で蘇る三人姉妹の台詞に不思議な実感を覚えた。
今、『楽屋』に描かれる女優たちと一緒に一歩踏み出したいと思う。
この長い長い夜の中、愛する遠方にはきっちり目を向けて。
「死人たちは決して血を失っていない。
死人たちは決して血を失っていない。
僕らはただしばらく眠りたいだけだ、
ほんの一分間、ほんの一世紀。」(清水邦夫『血の婚礼』より)
大河内直子
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